greenz共催!『根っこのある生きかたを、仲間とつくる』

こんにちは。郡上カンパニー取材班の田中佳奈です!

第二期共同創業プログラムのパートナー募集を開始した郡上カンパニー。
12/4に東京の芝浦ハウスにて開催されたNPO法人グリーンズと郡上カンパニーの共催イベント、「green drinks Tokyo」の内容をレポートします!

当日は約50名もの人が集まり、会場も満員となりました!

そもそも、「green drinks Tokyo」は、「世界の社会課題をポジティブなアクションで解決する」ことを命題にしているNPO法人グリーンズが開催しているイベントです。毎回、美味しいお食事とお酒を囲みながら、エコやサステナビリティ、ローカルなどといったテーマで楽しくお話しする飲み会です。

まずは、green drinks恒例の乾杯で開会!

みんなで一緒に根っこのある生きかたってなんだろう?と考えていきたいと思います!かんぱーい!

序盤は、郡上カンパニーディレクターの岡野さんから、郡上カンパニーのキャッチフレーズ「根っこのある生きかた」が生まれた背景について説明や、郡上の紹介がありました。郡上にきたことがない方が多かったので、みなさん興味を持って聞いて下さいました。

一杯目のコップが空いてきた頃に、メインのトークセッションに移行。この記事ではその一部をご紹介します!

テーマは、「根っこのある生きかたを、仲間たちとつくる」。トークゲストには、福岡県上毛町在住で、日本各地の地域の生業づくりや企画に携わっていらっしゃる西塔大海(さいとう・もとみ)さん、郡上カンパニー第二期共同創業プログラムのプロジェクトパートナーで、「郡上八幡ゲストハウスまちやど」を運営されている木村聖子(きむら・せいこ)さん、郡上カンパニーディレクターの平野彰秀(ひらの・あきひで)さんの3名を迎え、NPO法人グリーンズの植原正太郎(うえはら・しょうたろう)さんの進行で始まりました。

■ 田舎に住むことの捉えられ方が変わってきた

(植原)西塔さん、今地方ってどうなってるんですか?

(西塔)どうなってるかっていったら、やばいんですよ。今日本でいろんな問題が起きているんですが、その根本をたどれば人口減少にいきつきます。鎌倉時代には750万人、明治時代には3300万人だった人口が、その後150年で1億5000万人まで増えたんですね。短いスパンの中でどれだけ異常な成長をしてきたか、一目瞭然です。

総務省が出している人口推計によると、今から90年後の2100年には、5000万人まで減っていくことが想定されています。一番最初にこの影響を受けるのは、過疎地域、離島、中山間地域ですが、都市からそういう田舎に行く人が年間10〜20万人もいるんですね。これから一体日本で何が起きていくのか、わからなくてドキドキしてるくらいなら、そこに飛び込んで全面的に楽しんでみよう!というような意思が表れているような気がしています(笑)

移住者は今に始まったわけでなく、昔からいるんですね。これまで田舎に求められていたのは、ゆったりとした暮らしだったんです。でも2013年ごろからは、違う捉えられ方をされるようになってきたんです。自分の可能性を試して挑戦する場、としての分脈が増えてきました。

挑戦する場として選ばれている代表的なものが、地域おこし協力隊。起業型地域起こし協力隊の選択肢としては、今3つの流れがあるんです。1つ目が Next Commons Lab(ネクスト・コモンズ・ラボ)。大きな民間組織が一度に10名ほどの地域起こし協力隊を採用して、起業型人材を育てて行こうという枠組みです。2つ目が岡山県西粟倉村のローカルベンチャーという枠組み。ガツガツ稼ぐ人を採用しよというものです。3つ目は、各自治体独自の取り組みで、「郡上カンパニー」はこの路線をいっているものだといえます。

 

● 地元の人も移住者も、一緒に挑戦するのが郡上らしさ

(西塔)移住して起業するのは本来ものすごくハードルが高いんです。ここ数年、各地でもっといろんなサポートが必要だといわれている中、郡上カンパニーの仕組みは、地域側のサポート体制を充実させながらやっている。これは大きな特徴です。

僕から平野さんに質問ですが、郡上カンパニーは一緒になって伴走してくれる人がいますよね。どうしてこういうプログラム設計になったんですか?

(平野)前提として、この仕組みができる前から郡上には結構移住者がいたんです。第一世代と呼ばれる人は、20年以上前から移住しています。

 

その時期に移住された人たちが、郡上で子どもたち向けの自然体験学校や長良川でのラフティング事業を立ち上げて来られたんです。そこに、学生たちが半分アルバイト、半分ボランティアという形で手伝いにきているんですが、今ではその子たちが何十人も移住しているんです。働いていなかったとしても、そういう面白い先輩たちと出会って、人生変わってしまう人も多いんです。『郡上いいよ』って、人が人を呼んできている風土があるというか。

第一世代は、何か新しいものを興すというより、地元の人と一緒になって、教えてもらいながら起業される方が多いんです。川の文化もそうですが、踊りの文化も同様です。踊る人と見ている人が分かれるのではなく、みんないつのまにか一緒に踊っているというのが郡上おどりなので、郡上には昔からそういう土壌があるのかなって。

郡上カンパニーを始める前に、他の地域がどういう形で起業型プログラムを運営しているかを、一通り見に行ったんです。その中で、都会に住んでいる実力のある人が地域に入ってきて全くゼロから事業を立ち上げる、というのは郡上に合わないと思ったんですよね。というのも、すでに郡上にはいろんな可能性が見えていたから。全く別の文脈で新しいものを立ち上げると、地元との温度差ができるのが分かっていたんです。であれば、郡上に可能性や問題意識を持っている地元の人に乗っかっていく方が、郡上らしい仕組みができるんじゃないかと思ったんです。郡上らしさをみんなで議論した結果、今の郡上カンパニーの形になったんです。

(西塔)その形をとってみられて、どうですか?

(平野)見ていてよくわかるのは、地元の人が成長していくということ。成長というとおこがましいんですが、パートナーのビジネス経験とか考え方に触れて、地元の人も変わっていくんです。そういう化学変化が面白いです。

(植原)第一期共同創業プログラムのベンチャーパートナーの方には、何か変化を感じますか?

(平野)人と人が一緒にやるので、意見が違ったり、うまく噛み合わなくなったりと色んなことが起こりますよね。その度に事務局が伴走したり、同時期に飛び込んだパートナー同士で話し合う場をたくさん作っています。「仲間で支え合う」というコミュニティになりつつあるかなと思います。

一つ、具体的な例として「どぶろく文化発酵人」というプロジェクトを紹介させて下さい。わずか70世帯の母袋(もたい)という、どぶろく特区を持っている集落で、第3のどぶろくの銘柄を作り、それで都会と交流できるような農家民宿を運営しようと発案されたものです。東京の国立で焼き菓子店をしていた小野木さんがパートナーとしてきてくださっています。

今、民宿になる古民家を改装しているんですけれど、それに必要な重機とかを一つひとつ地元の人から貸してもらっていて、ほとんどお金をかけずに進めることができているんです。いよいよ設備を入れるのにお金が必要になるということで、今2人は、郡上の様々な機関から融資を受けようとしてます。こうやって、たくさんの人たちが関わることで、一人の想いが広がっていってるんです。

(西塔)一般的には一人で移住して、このような動きをしようと思うと、地域との関係性づくりに3年とか5年がかかってしまうんです。郡上カンパニーという枠組みがあるからこそのスピード感だと思いますね。

 

● 地域への移住するきっかけをつくる「関係案内所」

(平野)木村さんは以前、「ずっと郡上にいるかわかんない」と言ってましたよね。でも、まだいる。なぜ郡上に留まってるのか聞いていいですか?

(木村)私は自分で起業したいという感覚で、郡上にきたわけではないんです。ここじゃないな、ここでもないなと転々としているうちに、郡上に辿りついたんです。結局、どこに住もうといいところも悪いところも出てくるんですけど、郡上は、暮らす上でこれが決定的に嫌!というのがなくて。であれば、もう少し留まってみようと思って。

そうしたら、移住ブームがきて、周りから「郡上いいですねー」とか言われるとその気になってきたんですよね(笑)そのうち、郡上に住みたいとか、新しい生きかたをしたい、と相談を受けるようになって、自分が経験してきたことを話していたら、なんとなく役に立てそうな気がしてきたというか。そうして、9年が経ってしまった。

(平野)木村さん経由で郡上に移住してきた人、めちゃくちゃ多いんですよ。相談してる本人がやりたいと思っていることと、郡上で求められてるものを木村さんがマッチングしていく、一人移住相談窓口みたいになってますよね。

木村さんの「地域のニーズで空き家活用・八百屋付き下宿プロジェクト」を紹介してもらえますか?

(木村)八幡に限っていえば、家賃がすごく高いんです。あと、一人暮らしのだと6LDKとか広すぎて、実際に使わないし、お掃除も雪かきも大変だし、入居する敷居が高い。だから、郡上に暮らすファーストステップとなるような、ハウスシェアが必要だと思っています。

そんな場所を作りたいと思って「まちやど」を開業したんですが、宿泊業なので地域の人には必要がないんです。一階を開放していますが、いつでも気軽に来られる場所じゃない。だったら、現在新しく改装している「タテマチノイエ」では、下宿の空きスペースを活用して、地域の人が来やすい、来る必要がある場所をつくろうと、八百屋と食堂を併設することにしたんです。

この物件だけで終わらせずに、自分以外の人でも自宅と地域の人が必要としている要素を併せ持った場所を作っていけるような仕組みをつくりたいなと思っているのが、このプログラムのねらいです。

(植原)西塔さんから見て、このプロジェクトの必要性はどのように感じますか?

(西塔)めちゃくちゃ大事ですよね。まず、泊まれる場所があるのが大事。それから、これまでは地域との関わりを持てるところって、観光か移住の窓口しかなかったんですよ。移住相談は重たいし、かといって観光名所を回りたいわけでもない。そういう時に、今までどこに行ったらいいかわからなかったんですね。

最近、「関係人口」という言葉ができてから、地域の人や取り組みを紹介してくれたりと、地域との関わりしろを見せてくれる「関係案内所」ができています。このプロジェクトはそういう側面が強いなと思いました。こういう場所ってどうやって検索したらいいんですかね?

(植原)宿を入り口にして地域に入ると移住しやくすくなるというのはあるかもしれませんね。greens.jpでもゲストハウスと検索するとたくさん出てきますが、地域と関わるきっかけを作ることを念頭においたところというと、結構絞られる気がします。ゲストハウスのオーナーさんにそのスタンスがあるかどうかで、全然違うんじゃないかなと思います。聖子さんが世の中に増えるといいですね(笑)

 

—トークセッション終わりー

 

このあとは、ブースタイムに突入。郡上から駆けつけた、第二期共同創業プログラムのベンチャーパートナーが一人ひとり自分のプロジェクトを紹介し、部屋にちらばります。

『踊りの町に新たな産業を郡上メイドな鼻緒プロジェクト』 吉澤英里子さん

『もうひとつの帰る場所。おかえりツアー開発プロジェクト』 由留木正之さん

『持続可能な秘境をつくる!明宝小川プロジェクト』 西脇洋恵さん

3人からのプロジェクト紹介の後、参加者はそれぞれ気になる人の元へ話を聞きにいきました!トークゲストの西塔さん、郡上カンパニー事務局のブースも設けられ、それぞれに賑わっていました!

西塔さんブースでは質問や回答が活発に交わされていました

木村さんブースには、プロジェクトに興味のある人も見えました

 

今回のイベント参加者は、今の働きかたに疑問を持っている人、地方創生に関する研究調査のために参加した人、東京と田舎の二拠点暮らしを検討している人など、その参加の動機はさまざま。「根っこのある生きかた」というテーマで集ってくださった皆様にとって、何か少しでも新しい発見や気づきが生まれていれば嬉しいなと思いました!!

最後になりますが、現在郡上カンパニーは第二期共同創業プログラムのパートナーを募集しています!少しでも気になった方は、ぜひ詳細を覗いてみて下さい。

プロジェクト一覧:
1)地域で育(しと)ねる、明宝ジビエブランド化プロジェクト
2)もうひとつの帰る場所。おかえりツアー開発プロジェクト
3)郡上イチゴをブランド化イチゴ観光農園プロジェクト
4)地域のニーズで空き家活用八百屋つき下宿プロジェクト
5)郡上から世界へ。ものづくり底上げプロジェクト
6)最高な場所を求めて!Campingなカフェプロジェクト
7)踊りの町に新たな産業を郡上メイドな鼻緒プロジェクト
8)持続可能な秘境をつくる!明宝小川プロジェクト

 

INTERVIEWER / WRITER / PHOTOGRAPHER

田中 佳奈(たなか・かな)

百穀レンズ フォトグラファー、ライター、デザイナー。 1988年徳島生まれ、京都育ちの転勤族。大学で建築学を専攻中にアジア・アフリカ地域を訪ね、土着的な暮らしを実践することに関心を持つようになる。辿り着いたのが岐阜県郡上市。2015年より同市内にある人口約250人の石徹白(いとしろ)地区に移住し、暮らしやアウトドアをテーマにしたツアー開発や、情報発信を行う。在来種の石徹白びえの栽培にも生きがいを感じる日々。2018年、独立。

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