移住促進事業である「郡上カンパニー」。郡上の人と移住と新規雇用を生み出す事業づくりの実現を目指すのが「共同創業プログラム」です。2017年から募集がスタートし、2019年に第3期の移住者の募集と採用が行われました。

1. 共同創業プログラムとは

プロジェクト発案者である郡上の人と移住者が共同創業のパートナーとなって、二人三脚で新規事業づくりを目指します。事業の特徴は「郡上らしさ」。郡上の魅力である<人・自然・文化> がより成長していくような、郡上の地域資源を活用した未来の事業をつくります。

国の地域おこし協力隊の制度を活用し、創業パートナーである移住者は市と業務委嘱契約を結び、3年間の活動費を得ながら創業を目指します。郡上の発案者には、この期間パートナーが一人無償で付くため、金銭的なリスクを一部抑えながら新規事業づくりにチャレンジできます。なお郡上の発案者は、創業パートナーが一人つく以外の金銭的な支援はありません。一方で、様々な経歴とスキルを持った創業パートナーといっしょに起業にチャレンジすることで、郡上の発案者も事業家として成長することができます。

郡上への移住希望で多いのが「郡上らしい仕事に就きたい」。創業パートナーである移住者は、郡上らしい生業を自らつくることができます。また移住は孤独となる不安がありますが、パートナーである地元の発案者は移住成功に不可欠な「地域の世話人」としての役割も担っていただいています。

2. 共同創業プログラムの特色

移住促進事業である「郡上カンパニー」は、生業づくりも含め、移住された方の「郡上暮らし」を実現することが最大のミッション。そのため毎月の集合研修では、同期生の横のつながりをつくると共に、移住された方々に郡上を広く知っていただく機会としています。

広い郡上、それぞれの地域で風土が異なり、そこに育まれる<人・自然・文化>もとても多様です。就任1年目の集合研修では、プロジェクトの舞台となっている地域を訪れる「地域フィールドワーク」の他、山や川での自然体験(人の暮らしに必要な間=「あそび」)など、郡上を五感で体感する様々なプログラムを実施しています。

2年目以降は事業づくりに焦点をあて、市内外の起業家、経営指導者などを招いて事業化研修を年5回以上開催しています。

その他、事業をつくり、育てていくためには、支え合い、励まし合ったり繋がりながら事業をつくる「成長するコミュニティ」が必要だと考え、メンバー間の横や縦のつながりをつくるための全体研修や交流会も行っていますす。

郡上市の事業として、市内各部署との連携、郡上市産業支援センター、郡上市商工会、市民協働センター、郡上市観光連盟など、市内各団体との連携も実施しています。

事業づくりのサポートの他、移住された方の生活やメンタル面でのサポートのため、各期には担当ディレクターが付き、常にプロジェクトの状況を確認をしながら、メンターとして様々な相談にも対応しています。

集合研修(1年目・自然体験)

事業化研修

3. 共同創業プログラムができるまで

共同創業プログラムは、郡上の発案者が多くの努力の末、プロジェクトとして採択され実際に事業づくりに取り組んでいます。プロジェクトがスタートするまでは、1年をかけて応募からプロジェクト採択、移住者募集など、様々な努力の末、創業パートナーとの出会いを生み出しました。

(1)地域アイデア会議

郡上の「挑戦したい人」の事業アイデアを出す場。2017年〜2018年の4月〜6月、毎年7ヵ所以上で開催。3年間で延べ200人以上が参加し、応募アイデア数は50にのぼりました。挑戦する人と同時に応援する人を増やすため、2019年には「チャレンジサロン」を3回開催。参加者は応援券を購入し、応援したい人に渡します。

地域アイデア会議の様子

チャレンジサロンの様子

(2)共創ワークショップ

郡上の「挑戦したい人」の事業アイデアを、都市部の人の力も借りて育てる場。2017年〜2019年の7月〜10月に開催。都市部の参加者は3ヶ月間、延べ12日以上も郡上に通いながら「根っこあのある生きかた」に想いを巡らせ、未来の事業づくりを行いました。3年間で27プロジェクトが活動し、延べ64名の参加者と大勢の郡上の人々が取り組みました。オンラインを使ったコミュニケーションやプロジェクト進行も頻繁に行われました。このワークショップを通して、郡上のファンになったり、郡上と都市がつながって深いつながりの「仲間」が生まれていきました。

毎年10月には市内で発表会も行われ、ワークショップに関わった地域の人々や、まちづくりに興味がある中高生も多数参加して会場は熱気に包まれました。

(3)プロジェクト採択

共創ワークショップの発表会終了後、最終的にエントリーされたプロジェクトから創業パートナーを募集するものを市が採択する審査会が10月に行われます。最終年度となった2019年は、過去最高の21プロジェクトがエントリー。うち、7プロジェクトが採択されました。(2017年応募17プロジェクト・採択12プロジェクト、2018年12プロジェクト・採択7プロジェクト)

(4)創業パートナーの採用募集

採択が決定したプロジェクトは、翌年4月からの創業パートナーの募集をすることができます。12月から1月にかけて、東京、名古屋、郡上での説明会を開催。3年間で延べ 306名の都市住民が説明会に参加しました。その中から123名に仮エントリーいただきました。さらに自身で事業計画を書いて提出いただく「本エントリー」には計40名の方が応募。実際に採用された方は計18名でした、

(5)採用

募集は郡上の発案者の方も積極的に行います。本エントリーには事業計画の作成など、エントリー希望者にも大変な努力が必要となるため、エントリー前に応募希望者と何度も会って対話を重ねた方も多いです。多くの努力の末、本エントリーがあると郡上の発案者の方が応募された方の1次審査をします。「この人と一緒にやりたい」と思えたら一次審査通過となり、市の採用審査に応募者が臨みます。市の採用審査で合格となった方が晴れて創業パートナーとなり、翌年4月から郡上の応募者と一緒に事業づくりにチャレンジする「共同創業プロジェクト」としてスタートします。

(6)広報

郡上カンパニーでは、6月に「共創ワークショップ」の参加者募集、12月には「共同創業プログラム」の採用募集のため、東京・名古屋の大都市圏で説明会を開催しました。「郡上カンパニー」で郡上市を初めて知る人も多く、郡上市のシティプロモーションの一貫ともなりました。ワークショップ参加や移住を実践される方の他にも、郡上の他のイベントに参加したり、実際郡上に訪れる人が現れたりしました。大都市圏での説明会参加者は、3年間で述べ698名となりました。

○共創ワークショップ参加者募集
2017年(東京、名古屋、全3回) 106名
2018年(東京、名古屋、全3回)131名
2019年(東京、名古屋他、全4回)155名

○共同創業プログラム採用募集
東京、名古屋、郡上で開催
2017年 説明会参加者 109名・仮エントリー53名・本エントリー20名 <採用>8プロジェクト・8名
2018年 説明会参加者 140名・仮エントリー51名・本エントリー13名<採用>5プロジェクト・5名
2019年 説明会参加者 57名・仮エントリー19名・本エントリー7名<採用>・6プロジェクト・5名

東京での説明会の模様