「新しいことにチャレンジするのは、怖くないですか?」〜郡上カンパニーのリアルを伝えるドキュメンタリー完成

2018年4月から始まった郡上カンパニーの「共同創業プログラム」。新しい事業をつくることにチャレンジするため「郡上に移り住んだ人」と「郡上の人=事業発案者」が、3年間に渡って取り組むこのプロジェクトの第1期生・3プロジェクトのメンバーが、いよいよ卒業となりました。卒業のタイミングに合わせて制作がすすめられていた「彼らの本音」を収録したドキュメンタリー映像、「郡上カンパニー The Documentary – 1 -」(25分)がこのほど完成しました。

郡上カンパニーではこれまで、webや冊子で彼らの活動を伝えてきましたが、文字や写真だけでは当事者の本音や想い(熱量)が伝わりにくい・・・という声もありました。


そこで今回、第1期・3プロジェクトの事業完了(卒業)にあたり、彼らの生の声と姿を収めたドキュメンタリーの制作にチャレンジすることになりました。郡上カンパニーとしての3年間を完了し「卒業」を迎えた第1期創業パートナー(移住者)3名と、彼らと共に歩んだ郡上のプロジェクトパートナー(郡上の事業発案者)3名へのインタビューを中心に構成。また事業期間が残りわずかとなったところで結婚のため途中終了したメンバーへのインタビューも、彼女の人生に影響を与えた郡上の人の声と共に収録しました。



■困難な映像化を実現した郡上の若き映像作家

これまでも、郡上カンパニーの映像化は何回か検討されてきましたが、移住促進や新規事業へのチャレンジ、都市住民と地元の人との共創や地域の人びとの挑戦へのきっかけづくり、そして地方創生や未来の人材育成…など、複雑に絡み合うさまざまな要素が含まれた「郡上カンパニー」の取り組みを、どう切り取って、映像にまとめていくのか…と、なかなか結論が出ない状況が続きました。

幾度も構想を練り直し、本人へのインタビューで構成するドキュメンタリー作品にしようという方向性が決まりました。web公開で、多くの人が見やすい20分程度の長さの映像作品にするのは難易度が高いと予想され、これをつくるためにはどんな制作体制とスタッフを組めばよいのか、次なる模索が始まりました

2020年秋、郡上で活躍するビデオグラファーの笠井裕也さん(34)を撮影兼ディレクターとして迎え、本格的に企画がスタートしました。地元出身者でもある笠井ディレクターは、郡上カンパニーを理解していくなかで、「ここで起きていることを、郡上の若い人にも伝えたい」という想いを抱きます。これが作品を構築する軸となっていきました

 

■メインターゲットは高校生

これからの郡上の担い手をつくりたい。そのためには、ベンチャーマインドを持った人を呼び込みたい」という思いから生まれた郡上カンパニーでは、「第1ステップ(2018〜2020)」を起業意識の高い移住者からスタートするが、「第2ステップ(2021〜2023)」は、その対象を高校生とその親に広げていきたい。(郡上カンパニー当初企画書より)

大学や専門学校がない郡上では、高校を卒業すると8割以上の高校生が市外に出て、その多くは帰ってきません。「郡上ならチャレンジできる、自分らしい生き方が実現できる」…そんな郡上を実現することが、Uターンも含めた移住促進=「郡上カンパニー」の本質になとると考えていたため、事業の次の主役は「高校生」と定めていました

この事務局側の想いと笠井ディレクターの想いが重なり、このドキュメンタリーは高校生に伝えるものにしようと、制作の準備が本格化します。しかしそのなかで、高校生に本当に伝わるものにするためには、現役の高校生の視点が必要なのでは?…という議論が起こり、制作開始も危ぶまれる状況となりました。

 

■現役高校生が引き出した挑戦者たちの本音

その時出会ったのが、郡上高校3年(当時)の岡本弥生さん(18)でした。

岡本さんは学校の課題研究で、私たちの事務所を訪れました。彼女の研究は、高校生や市外の人に郡上の魅力を伝えるため、その魅力を強く感じているであろう郡上の移住者たちにインタビューをして、自らも見出すことのできる冊子をつくる、というものでした。

彼女のインタビューは、あらかじめ用意していた質問だけではなく、話を聞くなかで相手への興味・関心をより深め、より深い本音を引き出していくといったもので、その真摯な姿勢と問いを立てる力に感動しました。

そのインタビューの技量に惚れ込み、彼女に協力をオファーすることに。作品の主旨を伝え、学校との協議を重ね、出演の許可をもらうことができました。学校の課題研究や入試で多忙ななか、限られた時間で郡上カンパニーとメンバーそれぞれの情報を彼女に伝え、インタビューの準備をすすめます。

そしてスタートした撮影。高校生が投げかける真っ直ぐな問いに、メンバーたちもみな、本気かつ本心で答えていきます。彼女のインタビューはわれわれの期待を大きく上回り、これまで言葉に現れなかったメンバーたちの苦労や幸せの”本音”を引き出していきました。本編で使われているコメントの半分以上は、撮影現場で岡本さん自身が考えて質問したものに、みなさんが答えたものです。

インタビュー収録の模様

撮影がすすむなかで、岡本さんの想いも深まっていきました。ナビゲーターとして作品全体を構成する彼女のナレーションのセリフは、撮影を通して気づいた彼女自身の想いを表した言葉です。その言葉は自身の研究にも取り入れられ、学校で発表されました。岡本さんの研究発表の模様も今回特別映像 として作成しました。また撮影を通しての気づきについても、郡上カンパニーのアシスタントディレクター 古井千景さん(24)との 対談記事 で語っています。

 


 

こうして収録されたインタビューの総時間はなんと4時間以上。編集作業は、膨大な映像素材を、将来への夢や不安など高校生のリアルな心の揺らぎに答える形で紡いでいきました。加えて、未来を生き抜くための新しい教育が始まった郡上にある2つの高校からのメッセージも交え、2カ月におよぶ試行錯誤の編集の末、2021年3月11日、ようやく本作品は完成しました。

自身の人生をかけてチャレンジした人びと×郡上の若き映像ディレクター×卒業を控えた郡上の高校生。本気の人びとが出会い、化学反応を起こしながら、”この瞬間”だからこそつくることができた、郡上から”未来”へのメッセージです。(事務局 小林)

■出演
<第1期 共同創業プロジェクト 卒業3プロジェクト>
「どぶろく文化発酵人」
 創業パートナー:小野木 淳(東京から移住)
 プロジェクトパートナー:吉田雄輔(北海道出身/大和町)

「郡上職人列伝プロジェクト」
 創業パートナー:池野主水(東京から岐阜県に移住)
 プロジェクトパートナー:松葉和道(松葉建装/大和町)

「IT サービス開発の事業化」
 創業パートナー:宮崎倫明(愛知から移住)
 プロジェクトパートナー:赤塚良成(HUBGUJO/八幡町)

 

<第1期 途中終了(2020年12月)>
 「世界が郡上と出会う旅」
 創業パートナー:戸崎桂子

 

岐阜県立郡上高校 教諭 田中聡和
岐阜県立郡上北高校 教諭 熊崎孝之

郡上市役所 市長公室付部長 河合保隆

郡上の人々

 

■協力・スタッフ
衣装協力: 石徹白洋品店(郡上市白鳥町)

インタビュー・ナビゲーター: 岡本弥生(郡上高校 総合学科3年)

撮影・ディレクター:笠井裕也(郡上市白鳥町)

 

■作品時間: 25分15秒

 

■スペシャルコンテンツ

【対談】高校生ナビゲーター × AD古井 「将来なりたいのは”変な大人”?」

【特別映像】 郡上高校 課題研究発表〜移住者インタビューを通して気づいたこと

 

 

 

関連記事