最高な場所を求めて!Campingなカフェプロジェクト

2019年4月からスタートする、郡上カンパニーの第2期共同創業プログラム。現在8つのプロジェクトで、共同創業者を募集中です。各プロジェクトの郡上に住むプロジェクトパートナー(PJP)に順番にインタビューをしていく本連載企画。3人目は、ひるがのでORK PARKを運営している川端孝哉(かわばた・たかや)さん(以下、孝哉さん)です。


■ Campingなカフェプロジェクトについて

郡上市高鷲町出身の川端孝哉さん(以下、孝哉さん)は、ORKひるがのに勤めて10年。宿泊業から始まり、飲食業やアウトドア事業などの立ち上げにも携わっています。「Campingなカフェプロジェクト」は、それらの経験から得たノウハウを存分に活かして進めていくことになります。事業の発展だけではなく、今後の郡上にとって必要な環境をつくるきっかけにもしたいという孝哉さんに、お話を伺いました。

ひるがのOrkにて。手作りのベンチやサインが出迎えてくれるアットホームな空間でした。

 “Campingなカフェ”は、トレーラーキッチンで郡上各地を旅しながら運営するカフェです。店主は各地で発掘した郡上中の魅力を滞在先で伝えることで、カフェのお客さんが郡上の他の場所や他の季節に訪れることを促す“情報の発信基地”としての役割を果たします。

「夏に郡上に訪れたお客さんは冬の郡上のいいところを知らず、冬に来たお客さんは夏のいいところを知らないんです。例えば、キャンプにきたお客さんには冬のイベントを教えてあげたり、スキーだけしに来ているお客さんには、夏の郡上おどりのことを伝えてあげたいと思っています。場所ごと、季節ごとのオススメを発信する人がいたり、そういう情報を聞くことのできる窓口があれば、そこから郡上に興味をもってくれる人がさらに増えるんじゃないかと思っていました」

郡上の地勢は、最低標高地点が110メートル、最高標高地点が1,810メートルと、高低差が大きく、その分場所によって気候が大きく異なり、同じ時期でも季節の深まりかたに違いが生まれます。

「春夏秋冬、季節ごとの郡上の魅力を感じてもらいたいです。もっと細かくいうと、その時期でないと感じられない“匂い”に気づいてもらえると嬉しいですね。季節の変わり目って、都会ではどうしても天気予報とかで聞いて知ることが多いと思うのですが、郡上では自分の目や肌ではっきりと感じられるんです。そういった、その時期だけのいいものを、一番いい場所で味わうことのできるカフェを開くのが、このプロジェクトです」

孝哉さんは、季節感よりももっと微細な変化を感じられるのも、ここならではだと話します。

「壁に囲まれた室内で飲むコーヒーと、森の中で飲むコーヒーでは味が違うんですよね。早朝と夕方でも、また違った味わいになります。都会で飲むコーヒーの味はせいぜいお店によって変わるものだと思うんですが、自然の豊かなところでは、飲む時間や場所によっても変わるんです。そういう、味の変化をその人自身が発見できるような場所をつくりたいです」

一杯の特別なコーヒーを介して店主とお客さんのつながりが生まれると、きっと面白いことが起きるはず。孝哉さんは自信を覗かせていました。

「夏に八幡で営業中にお客さんと仲良くなれれば、冬に高鷲に移動したときにそのお客さんが来てくれるかもしれない。そうやって地域から地域へ店主もお客さんも移動し、混ぜていけたら面白いかなと思ってます。

まずは郡上に行きたいと思ってもらえるカフェをつくり、郡上にまた訪れたいと思ってもらえるような交流をはかり、結果郡上に住みたいと思ってくれる人を増やしていきたいと思っています」

ひるがのOrkの敷地を出てすぐの場所に広がる光景。
■目の前のことを全力でやり続けた

柔和な眼差しでお話しされる孝哉さんですが、その言葉の端々には、彼の力強いエネルギーがにじみ出ています。その力強さは、どこから来るのでしょうか?ヒントは、専門学校時代にスキーの指導者からかけられた言葉にありました。

「『お前、今日限界プッシュしてないっしょ、甘くね?』って言われるんですよね。その時、恥ずかしいなって思ったのを覚えています。サボるのも全力を出すのも自分次第だし、そこからは常に限界をプッシュし続けると決めて練習して、大会で優勝することができ、スポンサーにもついてもらえたんです。新しい技や新しい事は、自分の限界を超えない時には見出せないと、その時に学びました」

その言葉は競技だけでなく、仕事や遊びにも通用すると感じた孝哉さんは、社会人になっても「限界をプッシュ」の意識を持ち続けたと仰います。

専門学校を卒業する時期、従兄弟からOrkひるがので宿泊事業を手伝ってほしいと声がかかりました。翌年、孝哉さんの発案で、新規事業として近場のスキー場でクレープ屋を始めることになりました。

「飲食はやったことがなかったので、ノウハウは何もなかったんです。だから、色んな人を頼りました。初期の頃には、スキー場の駐車場に停まっているトラックの運転手さんにまで食材の調達方法を聞きにいったこともありました。その時は、やるしかないというか、やると言ったからには形にしないと!という使命感で動いてましたね」

クレープ屋を始めて5年が経過した頃には、一冬で20万食以上を売り上げるほどの人気のお店に成長。今ではフランチャイズ店を拡大させています。商売の面白さを実感した孝哉さんは続いて、アウトドア初心者の人が気軽にBBQや釣り堀などのアウトドアに親しめるOrk Parkや、セグウェイやバギーに乗ることができるOrk Adventureの新規事業に着手しました。

「このあたりは、ただの雑木林だったんです。道も、電線も通っていなかったので、重機に乗って木を切って、道を作って・・・と、全部自分でやりました。テーブルや家具もDIYですよ。

お客さんのリアクションで自分がやったことの答え合わせができると思っているので、『オシャレだね!』とか声をかけられるのは嬉しいですね。注目され、答え合わせができるほど、やる気と自信につながります」

目の前にあることを全力でやり続けた結果が、今の会社であり、今の自分だと語る孝哉さん。人や物と真剣に付き合えば、答えはついてくると信じています。

「最近でも、今限界きてるなって時はありますよ。スケジュール帳の予定が埋まると、一瞬やばいなと思うんですけど、間違ってないんだなって自分のケツを叩いてます。自分にとって『限界をプッシュ』はモチベーションに変える言葉ですね。でも、全力でやっても、必死な顔は見せないようにしています。周りには『いつも楽しそうやな、仕事やってるん?』って言われます。そういうパフォーマンスも含めて、自分の仕事だと思っています」

 

仕事で常に自分の限界を超えていくことを意識している孝哉さんにとって、プライベートの時間もそれと同じように本気に過ごされるようです。

「自分にとってオフの時間というのは、電波が届かないような圏外の場所に行くことなんです。人との接触を遮断した瞬間からが自分のオフの時間。山の中腹まで車でいって、そこから奥地まで歩いて登ります。

そこでしばらく過ごしていると、結局自分はちっぽけなんだということを思うんです。これまで確かに自分でやってきたんですが、色んな人に助けられたなとか、結局ひとりじゃ何もできないんだなって。そうしたら、みんなを大切にしようとか、人を思う気持ちが自然と湧いてくるんです」

     
■ 本気でやってきたからこそ見える、郡上の現状とこれからの展望

仕事もプライベートも本気で取り組む中で見過ごせなくなったのが、地元郡上の姿。これからの展望について語ってくださいました。

「自分たちがおじいちゃんやおばあちゃんになったとき、誰が面倒見てくれるんだろうって思うんです。それを危惧するなら、若い人がどんどん来てくれるようにして、サイクルを回していくことを考えないといけない。そのためには、自分はどれだけ希望を伝えられるかという視点や、先のある仕事ができているかと見極めていくことが大事だと思っています。でも、人が来てくれても、ここの魅力が伝わらないと長続きはしないんですよね」

だからこそ、スタッフへの接し方も工夫してきました。

「高鷲や郡上の文化を伝えることにも重きを置いています。まずは遊びに興味をもってもらって、徐々にスキー場開発に携わってくれた人や、この町をつくってきてくれた人、というような”今自分たちが楽しめる土壌を作ってくれた先輩たち”のエピソードを伝えるんです。自分が話をすると、聞いた人がまた他のスタッフに話してくれる。そうやって勝手に広がっているんです」

現在、Orkひるがのは30名ほどのスタッフが働いており、そのうちの10名ほどは他県から移住された方だそうです。多少の手応えを感じつつも、少子化のペースを考えると、郡上が保てなくなるのではないかと、孝哉さんは危機感を募らせています。「Campingなカフェプロジェクト」が、観光地としての郡上の魅力を知ってもらうだけでなく、移住に繋げることにこだわるのはこのためです。

もっと効果的に進める方法はないのだろうか?そんな時に知ったのが「郡上カンパニー」の共同創業プログラムでした。自社で新規事業を立ち上げるのとは違う観点で、より地域に開き、地域の未来にインパクトの与えられることをしたいと思ったのです。

「このプロジェクトで実現したいことの一つが、地域間であまり共有されていない魅力や情報を郡上全体に行き渡らせ、互いに誘客する機運を高めていくことです。例えば、八幡で商売している人が高鷲のお店を紹介したり、白鳥で商売してる人が明宝のお祭りをすすめたりとかでもいいんです。それぞれが自分目線で小さく発信するのではなく、お互い助け合って、みんなで郡上の魅力を発信する方がいいと思うんです」

郡上というより広いフィールドで、郡上の未来を見据えて必要なつながりをつくっていく。地元の人とのつながりが密な地元出身者として新しい風を吹かせたい!と、決意を語ってくださいました。

敷地内はどこもプレイフルな雰囲気が漂っています

■ 本気で、みんなとならできる!

現在、孝哉さんは「Campingなカフェプロジェクト」を共に進める共同創業パートナーを募集しています。アウトドアが好きで、情報や魅力の発信を得意としている人というのが必須条件です。孝哉さんは自分の世界観をすぐに掴んでもらえるようにと、普段からインスタグラムに投稿されていますので、応募を検討されている方はぜひコチラからご覧ください!

「どんな場所でも楽しめたり、自分で遊びかたを見出せる人が来てくれると嬉しいです。そういう自分と同じ感覚を持った人。仕事では、子どもの目線にどれだけ近づけるのかという観点も大事にしているので、素直な心でものを見る人、募集しています!

ビジネスチャンスはいろんなところにあります。『自分のフィールドを作る』そういう気持ちの人をお待ちしています!」

プロジェクト詳細:最高な場所を求めて!Campingなカフェプロジェクト

 

PROJECT PARTNER

川端孝哉(かわばた・たかや)

1986年岐阜県郡上市生まれ。学生時代はバレーボールに励み、卒業後に移動販売車でクレープ屋さんを始めました。アルバイトの経験しかない状態で始めましたが、独学で勉強し、5年目で年間約20万食を売るお店にまで成長しました。現在では、クレープ屋さんはフランチャイズをスタート。他にもORK PARK(BBQ場、カフェ、釣り堀)や、ORKひるがの(宿泊施設)ORK ADVENTURE(セグウェイやバギーなどの体験施設)など様々な事業に携わっています。趣味のキャンプを発信したInstagram(Instagram@takaya0421) がきっかけで、メディアに取り上げられたり、最近はキャンプ施設のアドバイザーなども務めたりするようになりました。

 

INTERVIEWER / WRITER / PHOTOGRAPHER

田中 佳奈(たなか・かな)

百穀レンズ フォトグラファー、ライター、デザイナー。 1988年徳島生まれ、京都育ちの転勤族。大学で建築学を専攻中にアジア・アフリカ地域を訪ね、土着的な暮らしを実践することに関心を持つようになる。辿り着いたのが岐阜県郡上市。2015年より同市内にある人口約250人の石徹白(いとしろ)地区に移住し、暮らしやアウトドアをテーマにしたツアー開発や、情報発信を行う。在来種の石徹白びえの栽培にも生きがいを感じる日々。2018年、独立。

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