<インタビューvol.09>つながりを取り戻すための旅。「もうひとつのふるさと」をめざして(進藤大明/由留木正之)

2018年からスタートした郡上カンパニー「共同創業プログラム」。中の人と外の人がつながりながら、郡上を舞台に数多くの挑戦が進行しています。昨年度で第3期が終了し、現在も合計7プロジェクトが進行中です。
本シリーズではプロジェクトを進める人たちに焦点をあて、郡上で挑戦するみなさんへのインタビューを通して、郡上カンパニーの今を伝えます。


第3期、2組めにお話しを伺ったのは「another home gujo プロジェクト」の移住者(VP) 進藤大明(しんどう・ひろあき)さんと、事業発案者(PJP) 由留木正之(ゆるき・まさゆき)さんのお二人。進藤さんは埼玉県の出身で、東京都で映像の仕事に携わっていましたが、郡上カンパニーをきっかけにパートナーと移住。お子さんも生まれ、郡上で新たな暮らしが始まりました。自然体験インストラクターの由留木さんと共に地域の特色を生かした自然体験ツアーを実施しています。郡上カンパニーのプロジェクトを終えた今、3年間の振り返りと、これからのチャレンジについてお話を聞きました。

インタビューは雪の積もる自然体験ツアーのフィールドで

興膳)another home gujo というのがどんなプロジェクトなのか教えてください。

由留木)another home gujo(以下、AHG)は、つながりを取り戻すプロジェクトです。例えば、都市と郡上の田舎だったり、今と昔だったり、それから自然と人だったり、人と人だったりっていう、断絶してしまっているつながりを、この郡上で取り戻したい。そういう活動ですね。

進藤)そのために、郡上という場所の自然の環境を活かして、そこで主に都市部からお客様に来てもらって、自分の身体を使った遊びや郡上でずっと続いてきた遊びや、地元の暮らしを体験してもらうツアーを主にやっています。

 

興膳)3年間、そのプロジェクトをやってこられたわけですけど、率直な感想を振り返ってみていかがですか?

進藤)僕はこれまでずっと東京で仕事をして暮らしてきたんですけど、このプロジェクトをはじめて、自然の中で思いっきり身体を使って遊ぶことや、自然と一緒になるっていうことを自分自身が本当に心地良いと思えるようになったことがまず一番良かったですね。
それから、都市部からいろんな方に来ていただいて、実際にツアーで自然体験をしてもらう中で、現代の特に若い人にとって、この活動やツアーが必要なことだなっていう実感が得られたので、良かったなと思ってます。


自身の体験からコミュニティの重要性を感じているという進藤さん

 

興膳)東京から進藤さんという心強いパートナーが移住してきてくれて、いろいろな役割分担をしながらプロジェクトを進めてこられたと思うんですけど、由留木さんの担った部分で新しくチャレンジしたことがあれば教えてください。

由留木)僕は、進藤くんとこのプロジェクトをやるまでは、地元で立ち上げた自然体験事業だったり、子どもや家族に向けた地域振興ツアーをやっていたんですけれども、やはり何て言うんですかね。数をこなす従来型のツアーではなくて、本当に個人を大切にできる……その後も郡上に通い続けてもらえるような関わり方ができるツアーを目指してチャレンジしてきました。もっと言っちゃうと、郡上市を気に入って移住しちゃうぐらいの《つながり》を構築したかったっていうのがありますね。

 

興膳)なるほど。進藤さんはいかがですか?

進藤)AHGのツアーは、由留木さんが30年近く郡上で培ってこられた地元とのつながりだったり、遊びのスキル、知識、自然との付き合い方があってこそだと思っていて、それについては学ばせてもらっているばかりですね。僕が担当した部分は、一つは事業としてツアーを成り立たせるための運営の部分を都会での経験を生かしてやってきたこと。もう一つは、情報発信の面で、まだ郡上に来たことがない方々にも、自分の専門のスキルである映像であったり、写真っていうものを使って、ツアーの魅力を分かりやすく伝えたり、活動の表面だけじゃなくもっと中の大切な部分を伝えられるように、クリエイティブの部分で工夫をしたところかなと思ってます。

 

興膳)郡上カンパニーとしてのプロジェクトは終わるわけですけど、これからチャレンジしたいことや、やってみたいことはありますか?

進藤)この3年間でいろんな方に来ていただいて、コミュニティっていうものをつくることができてきたかなとは思っていて、今後もこれまでに培ってきたコミュニティを大切にしながら、もっと大きく強いコミュニティにしていきたいっていう目標があります。事業的なところでいうと、そのコミュニティをちゃんと見える形にしたいっていうのと、可能であれば、そこから事業に活きるお金が生まれるような流れをちゃんとつくりたいですね。それから、さっきも言った映像とか写真を使ったクリエイティブ面でのブランディングというか、より魅力を伝える方法をもっと模索していきたいなと思っていて、あとは今まで通り本当にいいツアーをこれからも続けていければいいなと思ってます。

 

興膳)進藤さんの言われたコミュニティのつながりみたいなところが、どんどん広がってきているなという感じますが、由留木さんの中でさらにチャレンジしたいことはありますか?

由留木)今、このプロジェクト自体が僕のチャレンジですね。この事業をやり始めて、ものすごくその関係性が広がっていて、地元の人もそうですし、町(都市部)の第一線でバリバリやってる人たちが来てくれて、いろんなことを活動の中に持ち込んできてくれるんですね。来週この森でコンサートがあるんですけれども、関わりの中でそういうチャレンジが生まれていったりしています。
彼らの持っている技術や経験が、郡上の環境と化学変化を起こしていく……どんどん自分では思いもつかないことが起こる。そんな場面をこのプロジェクトの中で目の当たりにしてるので、もっと彼らや彼女たちの郡上でやりたいことに寄り添っていきたいなと思います。


プロジェクトから生まれた《つながり》と《変化》を楽しむ事業発案者の由留木さん 

興膳)進藤さんは郡上にパートナーと一緒に来られて、郡上に来てから第1子のお子さんが生まれたとのことですが、暮らしの方とかはどうでしたか?

進藤)そうですね、初めての子どもなので、分からないことだらけで……。ツアーの中でいろんなご家族のお子さんと一緒に遊ばせてもらっているんですけど、うちの子どもも成長するにつれて、どんどん遊びの幅が広がっていって、どんどんできることが増えていて、一緒にいてやっぱり楽しいです。
こっちにきてまだ3年ですけど、自分が学んできた遊びを、一緒に子どもとできるようになっていくのはすごく楽しいですね。

 

興膳)郡上に来て、いろんな人たちと出会ってきたと思うんですけど、何か印象に残っている予期せぬ出会いとか繋がりとかって何かあったりしましたか?

進藤)いろいろありますけど、やっぱり一番印象が強いのは、民宿のおかみさん。本当に素敵な方ばっかりで、知識もそうですし、料理のスキルもそうですし、人柄も含めて魅力的な方が多いというのは、こっちに来て本当に感動しました。

 

興膳)おかみさんとの具体的なエピソードがあれば教えてください。

進藤)これっていうエピソードっていう感じではないですけど、ただただ料理がおいしいっていう(笑) 。特に春の山菜を使った料理に関しては、民宿しもだのおかみさんも、愛里のおかみさんも、本当に「何だこれは!」っていう感動を超えた経験でしたね。

 

興膳)料理の技術も教えてもらったりしたんですか?

進藤)いえ、してなくて(笑) 。でもおもしろいなと思ったのは、明宝の女将さんたちがつくった『めいほう食の教科書』という明宝の料理や食材についてまとめた冊子があって、愛里の賀代子さんたちのいろんな料理のつくり方が書いてあるんですけど、そこには「この調味料を何グラム」とか、そういう表記は一切なくて、もう基本的に全て経験と勘と積み重ねてきた技でつくられているというのがすごく衝撃でした。習うとかっていうよりは、自分が味わって感動して、それが伝えられていければいいなと思っています。

 


地域の自然や文化、人を大切にしている由留木さんと、それを学びながら地域への理解を深めていく進藤さん。そんなお二人のツアーだからこそ、土地と参加者がつながり「もうひとつのふるさと」がうまれている印象を受けました。映像コンテンツでは、お二人の関係性やプロジェクトの中で印象に残ったエピソード等をお聞きしています。>>>

(2023年3月 取材:興膳健太 構成:鷲見菜月)

〈↓各URLはこちら〉

HP
instagram

facebook
Youtube

関連記事