<インタビューvol.08>ようやくスタートライン。郡上メイドな鼻緒がつなぐ人と人(山根さき/吉澤英里子)

2018年からスタートした郡上カンパニー「共同創業プログラム」。中の人と外の人がつながりながら、郡上を舞台に数多くの挑戦が進行しています。昨年度で第3期が終了し、現在も合計7プロジェクトが進行中です。
本シリーズではプロジェクトを進める人たちに焦点をあて、郡上で挑戦するみなさんへのインタビューを通して、郡上カンパニーの今を伝えます。


今回お話を伺ったのは、第3期「郡上メイドな鼻緒プロジェクト」の挑戦者(VP) 山根さき(やまね・さき)さんと、事業発案者(PJP) 吉澤英里子(よしざわ・えりこ)さんのお二人。山根さんは郡上市高鷲町の出身で、郡上カンパニーをきっかけに地元にUターンすることを決意。吉澤さんと2人三脚で活動を進めてきました。プロジェクトを終えた今、どのように感じているのでしょうか。3年間の振り返りと、これからのチャレンジについてお話を聞きました。

緊張しながらも、明るく和やかな雰囲気でインタビューに応えてくれた山根さん

興膳)はじめに、プロジェクトについて教えてください。

山根)はい。このプロジェクトは、郡上で400年以上続いている郡上踊りで必須のアイテムである踊り下駄の鼻緒が、実は郡上でつくられていないというところに着目して、郡上で新たな産業として鼻緒をつくっていこうという想いで始めました。

元々、岐阜県はアパレル産業が盛んだった場所で、いろんな素材がたくさんあります。例えば「さをり織り」という織物を使った鼻緒は、郡上にある福祉作業所で織られたものを使っています。

鼻緒をつくる工程は、大きく分けて7工程あって、その中には難しいところもあれば簡単なところもあります。なので、子育て世代のお母さんやお家から出れない人が、在宅でチクチク縫う作業することもできるし、年齢問わずいろんな方にの働く場づくりに繋がるのではないか思って、「郡上で鼻緒を作って産業化する」ことを目的にしています。

興膳)ありがとうございます。3年間取り組んできた、率直な感想を聞かせてください。

吉澤)元々、鼻緒をつくりを始めようと思っていた時はコロナ禍より前で、郡上カンパニーにエントリーするタイミングではこのような状況になるとは思わずに始めたので、この3年間はまともにコロナと被ってしまって大変でした。最終年度に郡上おどりが開催されて、ようやくその私たちが作ってきた鼻緒が少し注目していただけるようになったのは、本当にほっとしています。

事業発案者の吉澤さん

山根)最初の2年間はコロナの影響で、なかなか動きだせない時期が続いたんですけど、そのおかげで郡上のいろんな人に話を聞かせていただいたりとか、逆に自分の話を地域の人に聞いてもらうことができました。私は郡上にUターンで帰ってきたんですけど、郡上を離れた9年間の溝を埋めるように、地域コミュニティとの関わりが増えたことは、自分にはすごく大きな糧になったなって感じます。
最後の1年は、限られた中でしたけど無事に郡上踊りが開催できて、踊りを楽しみにしていたお客さんともお話ができましたし、2年間頑張ってきた鼻緒プロジェクトをお披露目できてすごく楽しかったです。有意義な3年間になったなと思っています。

 

興膳)ありがとうございます。3年間やってきた中で、特にチャレンジしたことや、力を入れたところがあったら教えてください。

山根)そうですね。これまで「ものをつくる」ことをやったことがなくて。「つくる」ということをよく分かっていない状態で、鼻緒づくりというプロジェクトを始めたことが最初は大きな壁でした。パートナーの英里子さんに教えていただきながら頑張りましたね。

あと、販売ももちろんですけど、SNSの広報も、郡上に来れない人とどうやってつながるかを模索して、フォロワーも最初200人くらいだったのが1000人超えまで増やしたことは、自分としては力を入れて頑張ったかなと思います。

 

膳)吉澤さんはどうですか? ご自身の役割で力をいれたところはありますか?

吉澤)さきちゃんには持前の良い部分を活かして前に立っていてほしいという思いがあったので、私はなるべく裏方に徹していたつもりです。ですので、どちらかというと商品の企画だったりとか、生産のことであったりとか、ある程度プロモーションというか、マーケティングの部分は力をいれて、それを実行して表に世に出していく部分をさきちゃんに任せれたかなという風には思ってます。

 

興膳)山根さんは郡上出身ということなんですけど、このプロジェクトをやったことで新たなつながりや、人との出会いがあったら教えてください。

山根)たくさんあります(笑) プロジェクトに関わった結果、すごく良いつながりができて、郡上に帰ってきて良かったです。これまでは、郡上に移住してきた方と触れ合う機会が全くなくて、地元の立場から見ると「なんでわざわざ郡上に移住してきたんだろう」って思ってたんです。でも、その人たちと出会って話を聞いてみると、地元の人よりも熱い想いがあったりとか、郡上のことをよく知っていたりして、すごくおもしろくて。多分郡上カンパニーでUターンしなかったら、そういうきっかけが無かったなって思います、あとは、地元だったとしても高鷲の狭いコミュニティにしか知り合いがいなかったので、郡上全体のいろんなところに人のつながりができてよかったです。

 

興膳)郡上のどんなところが好きですか? また、郡上の魅力を人に勧めるとしたらどう伝えますか?

山根)いっぱいありますね。景色だったりとか、自然が豊かというのももちろんありますし、人がすごく温かいところとか。
うちの花籠にくるお客さんは、郡上八幡観光に来た人が多いんですけど、地図を広げて、次ここ行ってください、ここを見てくださいって紹介します。八幡の中でも、すごくおいしいご飯屋さんもあるし、おもしろいお店がかあるし、景色もここへ行けばいい写真撮れるみたいなとことかもあるので。それから、古い町並みに人が住んで残ってるっていうのが文化的で珍しい場所なので、そういう話もちょっと挟みながら紹介します。

あとは、郡上の魅力は郡上八幡だけじゃないよってことも伝えたいと思っていて、郡上の中でも地域によって文化も違うし暮らし方も違っていて、そこがすごいし面白いんですよね。だから、「八幡に行ったら、次は高鷲に行ってください! 何なら私が案内するんで!」とかよく喋ってます(笑)

 

興膳)これからチャレンジしたいことがあれば教えてください。

山根)郡上内外の下駄屋さんや履物屋さんに販路をひろげたり、まったく郡上踊りを知らない人でも郡上を知ってもらうきっかけになるようにプロジェクトを広げていきたいですね。あとは自分の地元が高鷲なので、高鷲を中心とした地域おこしにも、もっと力を入れていきたいと思います。

 

興膳)郡上を知ってもらうというという点で、山根さんが最近はじめたことがあるとお聞きしたんですけど、それについて教えてもらえますか?

山根)新しい自分のチャレンジで、ポッドキャストを始めました。名前は、郡上のラジオ略して「グジョラジ」です。私は自称「郡上自慢大使」を名乗っているんですけど、実際はまだまだ郡上の中でも知らないことが多いので、郡上のおもしろい人を誘ってラジオで喋ってもらって、私の知らない郡上の魅力を郡上内外の人に広げてほしい、伝えてほしいって思いでやってます。ぜひ聴いてみてください。

 

興膳)ありがとうございます。吉澤さんは、今後チャレンジしたいことはありますか?

吉澤)正直、この3年のうちで本当にグっと動いたのは最終年度なんですね。なので、ようやくスタートラインに立てたぐらいの気持ちでいます。当初の目標よりもはるかに下回っているような状況なので、これからさらに郡上で鼻緒を広めていくっていう、まだまだそんなタイミングでいるかなという風に思ってます。
なので、継続してこのまま活動を進めながら、コロナがなければ3年間で進んでいただろうところのラインまで持っていくところから、4年目のスタートかなと思ってます。


コロナによる影響に悩みながらも、力を合わせて鼻緒づくりを形にしてきたお二人。明るくコミュニケーションが得意な山根さんと、裏で支えながらプロジェクトの舵取りをしている吉澤さんはバランスのいいパートナーという印象を受けました。映像コンテンツでは、お二人の関係性やプロジェクトの中で印象に残ったエピソード等をお聞きしています。>>>

(2023年3月 取材:興膳健太 構成:鷲見菜月)

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●山根さんのポットキャスト「グジョラジ
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